Monitor Layout

研究目的

高輝度光源加速器のような低エミッタンスリングに使用可能なビームプロファイルモニタの開発

光源加速器や、電子リングの場合、10-7 Pa 程度の超高真空の中を 電子が 100 億個くらいの塊で何周も周回する ( 1 気圧は 105 Pa)。 低エミッタンスリングの場合、この電子の集団は、他の加速器に比べてとても小さく、 水平方向に 40 ミクロン前後、垂直方向に 10 ミクロン前後の大きさで広がっている ( 髪の毛の太さが 80 ミクロンくらい)。 この電子の広がりを正確に測定することが必要であるが、測定によって電子ビームに なんらかの影響を与えることは望ましくない。

加速器中を周回する電子は、偏向電磁石によって軌道を曲げられ、 放射光 (Synchrotron Radiation, SR) を放出する。 従来では、非破壊測定の一つとして、この放射光を利用していた。 つまり、放射光による可視光の光学系を作ってビーム像を撮影していた。 しかし、10 ミクロン以下のビームサイズに対しては、可視光の回折限界より、 ビームサイズが正確には測定できない。

そこで上記のモニタと同様の簡便性・非破壊性を有し、 10 ミクロン以下のビームサイズでも十分測定できる高分解能のモニタを開発することになった。

原理

放射光のうちの可視光ではなく、X 線を用いて光学系を作ることで、 10 ミクロン以下のビームサイズ測定を可能にした。
X 線は可視光に比べて波長が短く (エネルギーは高い)、 回折限界に制限されずにビーム像が測定できる。 しかし、X 線は普通の物質ではほとんど屈折せず、 集光するのに特別な素子が必要となる。 我々は X 線の光学系素子として フレネルゾーンプレート (Fresnel Zone Plate, FZP) を利用して、X 線結像光学系を組んだ。

Fresnel Zones

光源 P の波を P' で観測するとき、Huygens-Fresnel の原理より、 波は同位相面上の点 Q からの球面波の重ね合わせで表せる。 この時の波の位相は、
exp[ i (2π/λ) (PQ+QP') ] と書けるので、光学距離 PQ+QP' がπ/2 異なる毎に、 P' での位相は反転する。 そこで、同位相面上を観測点からの距離が &lambda/2 異なる毎に区切り、1 つおきのゾーンから来る波のみが見えるようにすれば、 位相の打ち消し合う成分が取り除け、結果として観測点での波の強度が強くなる。 つまり、交互に透明不透明のゾーンが来るようにすればよい。

これを平面上に投影したものがフレネルゾーンプレートである。 これは、上に示してあるように、同心円上に透明不透明のゾーンが交互に連なっている。 ゾーン数が多くなるとフレネルゾーンによる回折分布は Airy パターンに近くなり、 その空間分解能は最外殻ゾーン幅 1.22 倍である。

我々のモニタでは、2 枚のフレネルゾーンプレート CZP, MZP によってビーム像を拡大し、 それを X 線 CCD カメラで撮影している。 また、放射光は分光器によって単色化され、色収差がでないようにしている。

測定装置

ATF

我々はこのモニタの有用性を実証するため、 高エネルギー加速器研究機構ATF にモニタをインストールした。

XSR Beamline at ATF
ATF でのビームラインの写真

測定結果

Beam Image
ビーム像

Horizontal Beam Profile
水平方向プロファイル (σx = 44.2 ± 1.6 [μm])

Vertical Beam Profile
垂直方向プロファイル (σy = 9.70 ± 0.36 [μm])