加速器の設計概念(誤差の影響)
何故落ちるか?という素朴な問いに対して答えを探したい。
ノーマルセルの対称性 → ビームは安定にまわる! 長直線部の透明性 |
ということで、落ちる原因は対称性と透明性が壊れる為である。
リングの対称性が悪化すると、運動量、振幅依存のチューンシフトが大きくなる。例えば、今まで初期振幅100シグマで共鳴線に当たっていたものが、50シグマで同じチューンに達し、共鳴線に当たるようになってしまう。この効果は対称性の壊れの程度に従ってほぼ連続的であり、逆に、壊れていた対称性が治っていくと、徐々にダイナミックアパーチャーが回復していく。
長直線部の透明性が悪化すると、共鳴に対して脆弱になる。すなわち、今まで隠れていた弱い共鳴線が励起され、そこで落ちるようになってしまう。しかし、励起された共鳴線はあくまで弱いものなので、共鳴線のまさに上の粒子以外はまわり、ダイナミックアパーチャーではまわらない領域がスリットのようになる。また、運動量のずれた領域ではもともと対称性も透明性もある程度壊れているために、透明性の悪化によってまず影響を受けるのは、運動量のずれた領域である。これらの効果は共鳴起因であるため不連続であり、ある程度悪化すると突然共鳴線が現れる。(おそらく、シンクロトロン振動やベータトロン振動、減衰などで共鳴線に近づくと徐々に振幅が増大し始め、通り過ぎてしまうと減衰で元に戻る、という増大と減衰の強さの兼ね合いである。ある程度までは減衰が勝り、増大が勝った時点で線上(線上の滞在時間が長い場所)から徐々に落ち始めるのであろう。数学的に解けない問題であるので、数値計算の結果を「観察」し、推定するほかない。) すなわち、ある程度まで悪化しても何の影響もなく、それ以上悪化すると共鳴線が現れる、という閾値のようなものが存在する。
(誤差を補正する場合、CODと分散関数を補正すると対称性が回復し、ベータ関数を補正すると透明性が回復する。補正の方針の項を参照。)
<理想的な場合のチューンダイアグラム>
以下の図を基準に考える。
→振幅依存、運動量依存チューンシフトの増大
↓
もともと存在していた強力な共鳴線に早く当たるようになる
<長直線部の透明性の悪化>
→ある種の閾値の様なものが存在し、それより悪化すると、
今まで効かなかった共鳴線が突如現れ、効くようになる
例えば、CODと分散関数のみ補正し、対称性は治っているが透明性は治っていない場合のダイナミックアパーチャーは以下のようになる。